2011年8月14日日曜日

消費者としてのリテラシー ・風評被害とは

(この記事は2011/3/20に書かれました)

みんな知っていることなので前置きはさておき、茨城県産のホウレンソウ、福島県産の原乳から規制値を超す放射性物質が検出された件。茨城、福島の農家及び酪農家の方々の不安や苦悩はお察しする。それを踏まえた上で、極力冷静かつ客観的に状況を把握すべく、例によってメディアリテラシー。元ネタは3月20日付け読売新聞。(いい加減終わりにしたいが書かずにいられない・・・)

「継続摂取しなければ問題ない」「ただちに健康へ影響を及ぼす範囲ではない」
医学分野を専門とする識者は、概ねこのような見解を示している。
以下、長瀧重信・長崎大学名誉教授(放射線影響学)のコメント。

暫定帰規制値は、少しでも超えて摂取したら必ず健康上問題が発生するというものではない。今回のレベルなら、たとえ地震発生後から毎日摂取していたとしても、大人ならほぼ問題ない。大人より影響を受けやすい子供であっても、甲状腺がんなどの危険は限りなく低い。データを注視する必要はあるが、過度に神経質になる必要はない。

同新聞内にて、「放射線の健康影響に詳しい鈴木元・国際医療福祉大学教授」もこれに追従する立場のコメントを寄せている。

この人達はあくまで自らの専門分野の立場から知りえる限りのことを話しているだけであり、問題を矮小化しようとする意図はないととらえることもできる。しかし、消費者心理というものを全く考慮していない。
いくら「大量に摂取し続けなければ問題ない」と訴えたところで規制値を超えた放射性物質が検出された事実は変わらないし、消費者は市場に出回っている生産物から何を選択するか判断する権利がある。今回の放射能問題を、農薬に置き換えてみて欲しい。「大量に摂取し続けなければ問題ない」量だからといって、規制値をはるかに超えた農薬が含まれる農産物を、あなたは積極的に購入したいと思うだろうか。つまり、例え上記の医学的根拠が信頼できるものだったとしても、市場原理にそのまま反映することは不可能なのだ。もっと平たく言えば、あのような説明では説得力が不足している、と言える。

この問題を全く別の立場から論じるとこうなる。以下、亀井利明・日本リスクマネジメント学会長の談話。

暫定規制値を超えたのであれば、出荷規制などは当然の対応。今後、生産者への補償などの問題が生じるだろうが、東京電力だけでなく、政府がリーダーシップを発揮し、対策を早期に打ち出す必要がある。風評被害が起きないよう、政府には分かりやすい情報開示と説明が求められる。

個人的には上記の見解の方が「現実的」であると感じるが、あなたはどう捉えるだろうか。なお生産者さんへの補償は当然必須、であろう。あと「分かりやすい情報開示」は「徹底した」に置き換えたい。消費者はこの問題に関して政府の動きをよりシビアに監視していくべきだろう。

補足:忘れないように記録。
今回検出された放射性物質の数値は、国内基準だけでなく、世界保健機関(WHO)と食料農業機関(FAO)の下部組織が策定した国際指標も上回っている。(3月20日付け読売新聞)



追記(2011/04/10)
冒頭の長瀧重信・長崎大学名誉教授、現在のコメント。
(暫定基準値は)基準を守ることで、将来的な発がんを極めて少なくすることができる」

「避難区域を決める際には、土壌汚染の程度などから、将来予測される被曝量とその健康への影響について明らかにし、住み慣れた土地で暮らすうえで、どのぐらいの影響なら許容できるか住民とよく話し合って決めることが重要だ。放射線の影響を受けやすい妊婦や子供にはより厳しい基準を設けることも必要になる」

最初のコメントと比べてみると明らかに論調が変わってますね。
事故の深刻さと長期化からして、「過度に神経質になる必要はない」などと悠長なことを
言ってられなくなったか?今さら遅過ぎる。