2011年8月14日日曜日

今日の放射能メディアリテラシー

(この記事は2011/3/19に書かれました)

怒濤のいきおいで続く原発/放射能リテラシー。書かずにいられないんですよ。

すべて2011年3月18日付けの読売新聞より、一部抜粋したもの。
まずは日本アイソトープ協会 佐々木康人常務理事の談話「過度に心配せずに」より。

避難地域や屋内退避地域の住民には、必要以上に不安がることはないということを理解してほしい。一般の人が自然界以外から浴びる放射線量は年間1ミリシーベルト(1000マイクロシーベルト)以下が望ましいが、少し超えたからといってすぐに健康が危険にさらされるものではない。(略)過信は禁物だが、これらの数値と冷静に向き合い、避難生活を送ってほしい。

例によって繰り返される「すぐに健康が危険にさらされるものではない」発言。
放射線医学/核医学の専門家の言うことが、この無責任/無神経さである。
あなたこそ避難生活を強いられている住民の、極限にせまる不安を理解しろ、と言いたい。
というか、そこまで言うなら福島原子力発電所半径20km地点に行ってみろ。

全ロシア原子力エネルギー工業研究所、イーゴリ・オストエレツォフ元研究員の談話。
1986年チェルノブイリ原発事故の際に消火活動に参加した。

チェルブイリでは最初の爆発後は基本的に事態は拡大しなかったのに対し、福島では時間を追って危機が広がっている。土壌と地下水の放射能汚染の危険性は高く、最終的には、チェルノブイリと同様、原発を石棺のような建造物で覆う必要が出てくると思う。

「基本的に事態は拡大しなかった」というのは事故のインパクトそのものを指しているのであって、放射能汚染の問題はまた別、ととらえるべきですね。サラッと書いてあるけど、ちょっと気になったので。そして重要なのが、「土壌と地下水の放射能汚染の危険性」。これが、日本のマスコミがまず伝えようとしないことだ。

数日前に、20km地点の水道水からすでに微量の放射性物質が確認されたというニュースを確か聞いたが、大きなニュースにはならなかった。「大きなニュースにしたくない」というマスメディアの意図があるからだろう。放射性物質は、スギ花粉とは違う。もしそれが大気に乗って太平洋沖合に飛んでいったとしてもー。それはすなわち、海が放射能で汚染されることを意味する。こんな嫌なことは書きたくないが、あなたは放射能で汚染された海で採れた魚や、汚染された土壌で育った野菜を食べたいと思いますか?それによって健康にどのような影響が出るか、想像したことがありますか?政府や東電は、このようなことが予想される事態であることを、どうにか覆い隠そうとしているのである。日本国民もバカにされたもんだな。。

日本国民は「ただちに健康へ影響がでるレベルではない」と繰り返される発言の裏側を直視するべきだ。放射線を一定量以上浴びたり放射能に汚染された物質を体内に取り込めば、例えただちに影響が出なかったとしても、後発的にガンや白血病など、何らかの疾患を誘発する可能性があるのは、まぎれもない事実なのだ。

そして最後。「放射性物質 影響は がん招く『ヨウ素131』」
少し長いが重要なので全部引用する。

使用済み核燃料の中には、毒性の強い「プルトニウム239」や「ヨウ素131」「セシウム137」「クリプトン85」「キセノン133」などの放射性物質が含まれている。「ヨウ素131」は、大量に人体に入るとのどに蓄積されて放射線を出し、被曝による甲状腺癌になる可能性がある。また「セシウム137」は放射線の強さが半分になる期間が30年と長い。長期間にわたって環境中に放射線を出したり、農作物や飲料水を通じて体内に取り込まれたりして、深刻な影響を及ぼす。気体の「クリプトン85」や「キセノン133」は吸い込んでも体内に残らないので、人体への影響はあまり強くないとされる。安斎育郎・立命館大学名誉教授(放射線防護学)は「放射性物質は風に乗って帯状に広がるので、遠い場所でも安心できない。居住地の近くで日常の100倍レベルの放射線が計測されたら、念のため外出を見合わせるなど注意してほしい」と話す。

鵜呑みにするわけではないが、避難地域の住民に「必要以上に不安がることはない」等と言う誰かの発言より、この人の発言の方が明らかに常識レベルに近い、と自分は捉える。

チェルノブイリ原発事故の後、放射能に汚染された草を食べた牛のミルクを飲んだ多くの子供が、甲状腺癌になった。その数は6000人ほどとされているが、統計に現れない被害もあるに違いない。

あの原発事故の被害は広範囲に渡り、国境を超えた地域ですら多くの子供が犠牲者となった。昔テレビのドキュメンタリー番組で見たのだが、(この記事を読むと、その番組は2006年4月16日(日) 午後9時から9時49分にNHKで放映された「汚された大地で〜チェルノブイリ 20年後の真実〜」の可能性がある)チェルノブイリ原発事故の影響で白血病や癌にかかった子供が暮らす施設が、ルーマニアにある(あった?)。あの時テレビの画面で見た、薄暗い部屋に佇んでいた頭髪がすっかり抜け落ちやせ細った少女は、恐らく今現在この世にいないだろう。「あの少女のために自分に何かできることはないか」と一瞬思ったものの、何もしないまま月日が過ぎて今に至ってしまった。

だから何、と言われるかもしれないが、これを書くのは自分の義務だと思っている。放射能で汚染された世界というのがどんなものなのか、その片鱗だけでも、一人でも多くの誰かに伝えておきたいのだ。

生きているうちに。