2011年8月14日日曜日

今日の放射能ニュース – 1都5県の水道水から放射性物質

(この記事は2011/03/20に書かれました)

ヤケクソの勢いで続く、福島原発事故関連&放射能ニュースリテラシーシリーズ。
(一日の時間のうちかなり、記事書く事に費やしてます。。)

とうとうこんな記事が発表された。1都5県の水道水から放射性物質、国基準下回る(確かYahoo!のニュースでしたがリンク切れになってました)
福島第一原子力発電所の事故の影響を調べている文部科学省は19日、首都圏を中心に1都5県の水道水から放射性ヨウ素やセシウムを検出したと発表した。

「いずれも国の原子力安全委員会が摂取を制限する基準値を下回っている」と書かれているが、基準値を下回っていようがなんだろうが、「原発で起きた事故の影響で放射性物質が漏洩し、首都圏の水道水からも検出された」という事実は揺るぎようがないのである。どうせまた「健康にただちに影響がでるレベルではないので冷静に対応してほしい」と呼びかけるのだろうが、この事実を忘れてはいけない。「影響がでるレベルでなければ放射性物質が水道水から検出されても問題ない」というロジックは成り立たないはずだ。また、基準値を策定しているのが結局国の機関であるということも気をつけるべきだ。

yahoo!などの大手サイトにはご丁寧にこんなリンクがはられているが。。。
(あえて誘導しているのか・・・)
放射線Q&A — 放射線安全研究センター

福島原子力発電所の事故に伴う放射線の人体影響に関する質問窓口 (Q&A)
※テンポラリページかもしれないので将来デッドリンクになる可能性あり。

上記を注意深く読むと、極力放射能の影響のマイナス面を避けて記述しているのが読み取れる。
以下、一部抜粋。

Q14 仮に事故が拡大して放射線の影響がチェルノブイリ級まで広がった場合、大阪や東京での生活に影響はありますか?

A:3月15日頃から東京でも放射線レベルの上昇が見られていますが、新聞報道等にもあるとおり、それによる被ばく線量は少なく、健康への影響はありません。外出を控える必要もありません。問題は、事故が進展してさらに深刻な事態になった場合にどうなるかです。今後の展開は全く予測できませんので、ある程度極端な状況を想定して、過去の事例から学ぶしかありません。このような観点からはっきりしているのは、これまでの原子力事故において、一般住民の間で、白血球が減る、髪の毛が抜けるといった急性症状は観察されていないということです。史上最悪と言われたチェルノブイリの事故でも、一般住民に確認されている放射線影響は、高濃度に汚染した地域における子どもの甲状腺がんだけです。それも、事故の後、放射性ヨウ素で汚染した牛乳を飲み続けたことが主な原因と言われています。当初、旧ソビエトが事故の存在を認めず、早い段階での避難や食品の摂取制限等が適切に行われなかったのです。したがって、これまでの原子力事故の経験に照らし合わせる限り、東京が人の住めないような場所になるとは考えにくい状況です。むしろ、人々がパニックに陥って西へ移動し始めた場合の混乱の方が懸念されます。大阪に関しては、どのような状況を想定したとしても全く問題ありません。(回答日:平成23年3月18日)

さらりと読み流さないで注意深く読んでもらいたい。例えば自分がちょっと気になった箇所をあげてみるだけでも・・・

これまでの原子力事故において、一般住民の間で、白血球が減る、髪の毛が抜けるといった急性症状は観察されていないということです。

放射能物質が漏洩しても急性症状がでなければ問題ないというロジックが成り立つわけではないことに注意。

史上最悪と言われたチェルノブイリの事故でも、一般住民に確認されている放射線影響は、高濃度に汚染した地域における子どもの甲状腺がんだけです。

私自身が正確な統計データを知っているわけではないので、これが嘘だなどと断言はできないが、問題を矮小化しようとしている意図をどうしたって感じてしまう。例え上記の情報が正確だとしても、「子どもの甲状腺がんだけです」などと軽々しく過小評価していいわけがない。6000人もの犠牲者が発生しているのに。人の命を何だと思っているのか、、、

原子力エネルギーを推進したり安全性をPRする機関が(例えそれが公的機関であっても)放射能の影響や原子力の説明をする際に、マイナス面を極力抑えた表現にするのは当然と言える。公的機関や専門機関だからといって情報が正確/中立的とは限らないことを肝に命じておこう。たとえデータが正確だとしても、それに添える解釈によって受け取る側の印象は大きく変わる。データそのものは改ざんされていないとしても、「科学的に立証されたデータ」「統計的に正確なデータ」なんていくらでも発信者の意図によって歪曲化して伝えることが可能、ということを忘れてはいけない。

特にこと今回の問題に関しては、与えられた情報や誘導された情報を鵜呑みにせず、情報の発信者が「伝えようとしていること/伝えたくないこと」を注意深く読み取り、それが信頼に値する情報かどうか、自分の力で冷静に判断して欲しい。例えば、その記事のセンテンスを注意深く読んで「ロジックが成り立っているかどうか」を読み取ってみよう。(ここでいう「ロジック」の意味がわからない人はこれ以上読まないでください・・・)

私の判断するかぎり、これまでの東電や政府の発表、日本のマスコミの一部の報道の多くは「ロジックが成り立っていない」。もちろん、海外の報道なら信頼できるかといえば、そうとは限らない。が、海外の報道記事を読んでいて感じるのはおおむね「ロジックが成り立っている」ことである。ロジックが成り立っていればその報道が真実であるとは言わないが、少なくともその記事において、何かを隠蔽することなく知りえる限りの事実を伝えようとしているか、可能な限り客観的な分析を行おうとしているか、の判断材料にはなる。

何度もしつこく書いているように、私自身は問題に対する「解答」を持っていない。私にできることは、事態を矮小化した大マスコミの記事も、人々をパニック状態に陥いらせるようなネット上のデマも鵜呑みにせず、極力中立/客観的な情報を入手し、自らの力で現状を把握/分析するようにして欲しいと声を枯らして吠え続けることだけである。私たちにはそれができるはずである。私たちは従順な羊ではなく、人間なのだから。

追記(2011/03/24)
チェルノブイリ原発事故当時の話。チェルノブイリの被害はロシアを超えヨ−ロッパの広範囲に渡り、その結果イタリアは国民投票を経て原発廃止の決断をした。

参考
http://romenavi.blog47.fc2.com/blog-entry-1465.html

近年はイタリアでも原発再開の計画が決定していたそうだが、福島原発の問題により1年凍結する方針となったことが22日発表された。