2011年8月14日日曜日

「冷静な」消費者として

 (この記事は2011/3/21に書かれました)

今日も続く放射能リテラシー。いい加減終わりにしたい・・・しかし書かずにいられない・・・

連日繰り返される、ヒステリックとも言える政府やマスコミ、識者からの「冷静に対応してほしい」発言。あまり繰り返すと、そこまでヒステリックに言わざるを得ない事態なんだな、大丈夫か、と逆に猜疑心を助長させるんじゃないの・・・、と心配してやりたくなる。

さておき、3月21日付け読売新聞よりほうれん草・牛乳からの放射性物質検出関連記事から、キーとなるパートをピックアップ。発表を受けて、茨城県は農協などに対し露地栽培のほうれん草の出荷自粛要請をしている。また、関東甲信越地方の大手スーパーチェーンの一部で商品を一部撤去する動きが出ている。さて気になったのが以下の箇所。

一方、入荷済みだった同県産ホウレンソウを20日現在も使用している大手ファミリーレストランもある。担当者は「国が、直ぐに影響を与えるものではなく安全だと言っているので使っている」とするが、客には知らせていないという。その上で、「撤去なんて、風評被害を広げるだけで、とんでもない。国がもっと安全性をアピールするべきだ」と話した。

「影響を与えるものではない」と判断して使っているのであれば、堂々と消費者に知らせたらどうだろう。またこの担当者は消費者から苦情が来たら、「国が安全だと言ったので」で通すつもりなんだろうか?



現在世の中で「風評被害を防げ」という声が高まっている。(ある意味ヒステリックなほど)しかし風評被害という意味をはき違えている人々もいるのではないだろうか。風評被害というのは、実際には問題のない対象が、デマや誤った情報により問題があるかのように捉えられてしまい、そこから派生する被害である。実際に放射能物質の規制値を超えている(またはその疑いがある)のであれば、出荷規制や商品撤去を行う方が常識的な判断と言える。そうでなければ何のための規制値なのか。

被害に合われた農家や酪農家の方々の不安や怒りは察する。くやしくてたまらないだろう。だからこそ、政府や専門家は声高に「直ぐに健康への影響はない」「冷静に対応して」とヒステリックに叫ぶだけでなく、生産者への補償と合わせて、徹底したモニタリングとオープンな情報開示を継続して行っていくべきだ。事態の過小評価・矮小化などもってのほかで、マイナスにしかならない。消費者がきちんと安心・納得した上で商品を購入できる方向へと導いていくことが、最終的に生産者を守ることにつながる。これは原子力エネルギーを推進し続け、また今回の事故災害を引き起こした政府と東京電力の責任である。

同新聞社説においても「摂取して直ぐに健康に影響するほどの量ではない。(略)冷静に対応しよう」と呪文のように同じ表現が繰り返されているが、これを書いた記者は規制値の27倍の放射性物質が検出されたホウレンソウを食べる事はないだろう。「冷静な」消費者として、多くの類似の発言はそういった責任をろくに引き受けもせずにされていることを、よく覚えておこう。そして以下の記述も気になった。



今回は国際機関が提案した指針を暫定的に採用したが、日本人の食生活の実体に適しているかどうかを検討し、過剰な規制も防ぎたい。

「日本人の食生活の実体に適している」規制値とは、何を基準に考えているのだろう。まさか、原発立国の日本においては、多少放射能漏れがあっても仕方ないから基準を緩めた方がいいんじゃないか、なんて言わないでしょうね・・・

最後に、同じ新聞でこういう記述が。
Q 暫定規制値にはどういう意味がある?

A 笠井篤・元日本原子力研究所研究室室長によると、放射性物質を含む牛乳や乳製品を1日1リットル、水を1日2リットル、葉もの野菜を一日100グラムなどについて、それぞれすべてを1年間毎日摂取し続けた時に、発がんなど健康に害が出る放射線量を測定したものだ。仮に1回、規制値の100倍程度の放射性物質を誤って摂取してしまったとしても、身体的な影響は表れるものではない。だからと言って、規制値を超えるものを食べて良いというわけではない。

個人的には、最後のひと言がこの世の常識に近いものだと考えている。


補足資料:各地で観測された放射性物質(3月21日付け読売新聞より)